滑った感じ/八男(はちおとこ)
 
べなのか、わからなかった。私は家具屋だと思っていた。ラーメン屋のわたなべを曲がったとき、この先ティピがもし無かったとしても後悔しないでおこう。そう思った。そのときはおっさんとはもう縁が無かったんだと諦めようと、自己中心的な決断をした。覚悟を決めたときはときは心が大きくなった気がしたけれど、覚悟した直後にティピを見つけてしまったので、サザエさんのオチのときに感じる、主人公の気まずさのようなものが漂った。明滅する心の中の恥模様のほうが、外界に振りまく恥よりも恥ずかしかったりする。さっそく車のミラーで自分の顔をチェックすると、照れが顔の表面に泉のように沸き出ていて、可愛らしかった。ぱらぱらしていた雨も、
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