滑った感じ/八男(はちおとこ)
時は、ときおり鏡を見ては、いい顔しているなと、うっとりした。
琵琶湖湖岸の道路をひたすら走って、ラーメン屋の「わたなべ」を左折すると、辺りは田んぼばかりで、両岸に田んぼが並ぶ道路をひたすら走る。窓を開けると、冷気と馬糞の臭いが車の中に入ってきて、慌てて閉める。車内の暖房に、外から入ってきた冷気が暖められるまで、馬糞の臭いも残っていた。やがて、さっきまで遠くに見えた山と集落が近づいてきて、その集落に隣接する田んぼに、ティピらしき、白い三角錐が見えた。
ほっとした。着いた。おっさんに場所を聞いたとき、「湖岸走って、わたなべを、左曲がってまっすぐ」としか聞いてなかったので、なんのわたなべな
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