『神を噛んで。』/川村 透
 
うだろう
「わたしは世界の蛇である」なんて唱えているあなたは
なんて、なんでここまで不潔なの?
鎌首をもたげるそれはまともに見るとただおぞましくて
みすぼらしくて、ちぇっ、なんかやだなぁ

チュッ、
蛇の頭に適当にキスをすると
あの方はそっとあたしの髪と耳に触れた
と、
ぽたぽたと、しずく、を頬に感じて
目線を上げると
うるんだあの方の瞳と出会ってしまった
泣いていらっしゃる。
不意にあらあらしく頭ごと押さえつけられて
喉の奥まで蛇がかけのぼってきた
あの方はすすり泣くように唱えごとをしながら
あたしのおくちに神さまのおことばを伝えようとしておられるんだ。
ゆっ
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