R/有邑空玖
プル。オキシドールの漂う廊下。絶望しか見出せない隔離病棟の暗い病室。霊安室へと続く階段。医師達の足音。誰かの泣き声。冷たいストレッチャーは今日も死者を載せて行くのだ。
あたしの妄想の中でRは何度も生き返り何度も死んでゆく。此の世の一切を受け付けなく成ってしまった死者達は、瞼の裏に何を見るのか。何も見ないのか。……生者には判る筈も無い。
…………しあわせそうなあなたたちがにくいわけじゃない。
叫んでも届かないから名前を呼ぶのはもう止めた。
泣いて居ても戻らないから哀しむのはもう止めた。
相容れぬのだ。其れは判って居た。
(腕を
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