残留思念/ホロウ・シカエルボク
 
くないよう
行きたくないよう
明日になんか行きたくないよう
乳飲み子のように泣いて見せても
母親の乳房はもうないのに
平手で頬をはるような寒いときが
薄い膜のように降ってくる
ふわり
ふわり
はらり
はらり
死者の目のような満天の星
新しいさよならを待っているような静けさ
もう過去すらも行き来しない通り
途切れた往来の一点
けして移動しない一点
母親の乳房はもうない
隠さないで
隠さないで
怖気を
怖れを
かえりみることの出来ない種類の成り立ちを
甘い歌をたどることに飽きたら
確かにもうそこにはやることはない
枯れた土地の片隅で死んだ
痩せ犬はいつ
[次のページ]
戻る   Point(1)