アオウミガメの百年/楽恵
んでした
また前と同じように友だちを失くしてしまうのが悲しかったからです
可愛らしい色の甲羅を背負った海亀が寄ってきても
もう恋をすることはなくなりました
再びいっぴきぽっちになってしまう時の寂しさが怖かったからです
青海亀の背中の甲羅より硬いものは
今では大海原に存在しなくなりました
寂しさの分だけ
悲しみの分だけ
甲羅が硬く立派になったからです
でも夜空に浮かぶお月さまだけは
いつも変わらず
海亀の甲羅を優しく照らしていました
青海亀は
大海原をいっぴきぽっちで百年生きました
ある晩
青海亀は呼吸をするため
海のうえに顔を出しま
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