どこにも残らないのにみんなそのことを覚えている/ホロウ・シカエルボク
の向こうに雪が降り始めているのが判る
訪ねてくる誰かがいるのなら心配もするけれど
あいにく予定という予定がこのところ入った記憶がない
届いたっきり忘れてた手紙の封を開けて
なにが書いてあるのか確かめてみたけれど
僕に関係のありそうな事柄はひとつとしてなかった
全部僕の名前に届いているのに
それもおかしなことだなぁなんて思わないこともないけど
みて、きれいねと上の方から声が聞こえる
女の声の甘さから多分恋人同士が
窓を開けて雪を眺めているのだと判る
彼らは幸せなのだ
それがなぜかは僕には判らないけれど
彼らの声はすぐに聞こえなくなった
寒くなったのか
あるいはよりいっそ
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