焚き火がしたかっただけなのに/草野春心
寒くて
指の先まで届きそうな
死に向かう冷気
それはそれで
兎角寒くて……
やらなければならないことは
3枚の毛布を体から引き剥がし
1枚のシャツと1枚のタートル・ネックと
季節はずれの1本のジーンズ
靴下
そいつらを体の各所へとかぶせてやること
ストーブの前で
仰々しい
醜いまでに仰々しい行為さ
それから
部屋のドアに続く50センチメートルあまりの
路をひっそりと歩いてゆく
ドアの前から
ドアノブの上への
ゼロ距離を右手でおそるおそる
様子をうかがうように縮めてゆく
顔を洗って髪
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