冬と玻璃/木立 悟
 






雨の目の見た風景を
ひとつの声がすぎてゆく
虹降らす曇
血のにおいの指


鏡のかたちをぬぐいながら
あらゆるものが去ってゆく
うしろ姿 あらゆるものの
うしろ姿


とまどい
高く小さな影の群れ
目のなか まぶたの上を廻る
暗く明るい声のかたち


丘を丘へ飛ばす風
黒く白くつづく道
誰もいない 望むものは
望んだ時に失われている


血のにおいの波は止まず
風を風に縫いつづけ
午後は倒れ 午後は倒れ
絵の具の水を浴びつづけ


夜の根元
涼やかな声
振り子のように
戻り去る声


けものの内に

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