花氷り/結城 森士
 
だったはずなのに
答える代わりに
少女の左手を軽く握った
蒼白い指は、折れそうな、細い小枝のようだった

まるで別人ね

呟く声は震えていた
灰色の煙突、割れたアスファルト、ハルジオンとヒメジオン、若草とスミレの野原、宇部森の池にすむザリガニ、お誕生日に鶴を折ってくれたのはこの少女ではなかったか。公園の鳩の群れ、黄色いブランコ、赤いあやとり、初めて飛行機雲というものを教えてくれたのはこの少女ではなかったか。白い煙が青空に吸い込まれて消えた。小さな部屋の畳の上で、私たち、よく一緒に遊んだのよ?

まるで別人ね

大人びた声で、もう一度繰り返した
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