花氷り/結城 森士
がっている
私は俯いて少女の後ろを付いていく
祭りの夜には
大抵一人は神隠しにあうの
陰鬱な月の光が
少女の顔をそっと照らす
私はその顔をよく知っていたが
どこで出会ったのかは覚えていなかった
木製の箪笥、色とりどりの折り紙、澄んだ硝子のビー玉、お弾き、皮袋に入れられた匂い玉、ビーズの腕輪、黒い髪留め、あどけない黒髪、柔らかな素肌、すっかり別な人になってしまったのね。
なぜなの?
少女は私に問いかけたが
本当に何も分からなかった
少女は私の名前を知っていたが
私は少女の名前さえ覚えていなかった
なぜ忘れてしまったのだろう
きっと、何よりも大切な記憶だっ
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