帰りたくない/木屋 亞万
届かない
目にするものすべてが
もう駄目かもしれない
明日は
いつ来るのだったか
ずっと待っているのだが
入れ違いになってしまったのかもしれない
目の前にいるのに
行き過ぎていく
まるで
鈍行に見放された駅
雨はしばらく降っていない
濡れてもいないのに
身体が冷える
触るとつめたい肌に
手を伸ばすときは
爪を切っておいてください
体温は高いようだ
だから冷気がまとわりついて
水分を表に出そうとする
空気さえも
身体だけ
通過していく
差し出された手には
いつもポケットテッィシュ
2つ3つを重ね持って
笑顔で
服の上から
押
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