帰りたくない/木屋 亞万
押さえつけてくる
一生懸命
言葉を投げかけるのだけれど
相手の意識は言葉を避けて
服と体内の間に潜り込む
届いてこない
美しい写真、それはどこなのか
連なる言葉も、伝えたいと思っていないのか
助けを呼んでも聞こえていない
ずっと待っている
百年
舞っていて
暮れますか
もう
百年は
そんな夢を見た、話を繰り返し読んで
三夜目に怖くなって
部屋は閉じていて
完結していて
息苦しいばかり
夢を希望とは呼ばないでほしい
走る部屋を人は電車と呼ぶ
人間の嫌なにおいに満ちている箱
箱は小刻みに揺れていて
もうだめなやうだ、と
口に出して繰り返し読んでみて
死ぬんじゃないと
心の底から思って
そして誰かに
そう言って欲しくて
赤い街を歩いている
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