湖のように豊かな、浦歌無子さんの詩集 『耳の中の湖』/イダヅカマコト
 
 ツボサンゴ アヤメ 雛罌粟 タチアオイ
梔子 サルビア リアトリス ベロニカ ランタナ マリーゴールド
ぜんぶぜんぶ摘んで妹のために花かんむりを作ったのに
妹はどこにも見当たらないから
摘むたびに小鳥の骨が折れるような音がするそれらを
口に含み舌で愛撫し呑み込むけれど
どれもこれも違う味がしてちっとも満たされないから
小鳥のお墓をいくつもいくつも掘り返す
ぽこぽこと庭に穴を掘って
いくつものいくつもの小鳥のお墓を掘り返して
小鳥の白い骨を口に詰めこんだ
口のなかでからから鳴る音がやっぱりおかしくておかしくて
走り回っているうちに深い深い穴に落ちて
それ以来眠ることができ
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