あかねいろのひと/恋月 ぴの
ふと目を上げると向かい側には同い年くらいのひと
高尾山にでも登るのかいかにもって雰囲気で
ひと待ち顔でおしゃれなデイパックを開けたり閉めたり
わたしと言えばパン教室のお友達を待っていて
忘れ物しなかったか使い古しのバッグを開けたり閉めたり
へえ、上から下までブランド品なんだ
わたしが学生だった頃
ワンダーホーゲル部御用達とかの重たっ苦しいリュックサックを背負わされ
新宿駅アルプス広場に集まった部員達と零時一分発の夜行に乗り込んだ
おんなを捨てたもの同士で夜通し語り合った
あの頃っておしゃれなんか無縁だったし
それでも早朝の小淵沢駅に降り立ち見上げる甲斐駒ケ
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