水の遍歴/木立 悟
 







木漏れ陽や影が
昼の星を見ている
羽は
羽から目をそらす


家の裏の沼には
家が沈んでいる
建つものもなく
枠は増える


   翳りが
   異なるほうを向いています
   今 元に戻りました
   でも 正しさとは何か
   わかるまでには至りません


空の奥の空
空を秘す空
岩と海と樹に響き
野へ打ち寄せる闇となるもの


二重(ふたえ)の雨
二重の笑み
そそぎ そそがれ
離れる光


   やわらかな やわらかな爪です
   指の内側
   指の外側の指のように
   見えないかたちを
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