濁流/within
 
て訪ねた。
 祖母も股関節を痛め、立ち上げることも儘ならなくなり、祖父との二人の生活では、介助することもできず、結局は財田にある老人ホームに入居せざるを得なくなった。
 母はそんな祖父母の世話のため、ちょくちょく用事を頼まれると車で走った。僕は時折、顔を見に行く程度で、これといって何もしてあげることができなかった。
 ベッドの上で、
「ばあちゃんは何も悪いことしとらんのに、何でこんな辛い目にあわないかんのやろのお」
 と言う祖母に、僕は何も言葉をかけてあげることができなかった。
 そのとき、老いるということは、喪失の繰り返しで、新たな苦しみをを受け入れていくしかないのかもしれないと、ぼ
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