○月×日 日直 ユメ夫/ヨルノテガム
 
隠れそうになる ついにあきらめという
 言葉を飲み込んだ途端、口の中から四分の一サイズの
 自称(ボク)が脱皮し 水面から四分の一分、生まれ、
 助かるのであった、また満潮が届くとその途端に
 また四分の一サイズの(ボク)は脱皮して息を続ける
 満潮と脱皮はくり返しくり返し 溺れることはなかったのだ
 しかし その記憶は小さくなりすぎて 無くなる


 *


 蟻の行列が右手の甲から腕にかけ 肩背中を通り
 左腕、左手の甲へと延々と続いている
 彼らが喜々として運んでいるものは何か、暗闇の奥を
 右手で探っていくと今、今左手の指に触れた気がした
 右から左へ 身体
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