○月×日 日直 ユメ夫/ヨルノテガム
た
歯ブラシと歯が入れ替わって 口の中は
細いブラシだらけで泡立っている
どのドアを開けてもトイレばかりのびっくりハウスに迷い
矢印の一方通行を案内に 細くなっていく廊下を進めば
右を曲がった所で 矢印は上を指し、見上げると
「もう一度、正月へ戻る」
の文字に気づき すでに足元から穴底へ落とされている
蝉の声はラジオのチャンネル合わせの音がして
世界の言語を運んでは途切れさせている
暗闇は足首から沼へ入り込んでいくような感覚を帯びる
今、満潮を体感して 身体で時間を刻み計る そして
水位は確実に肩を越えようとし始め
上を向いた口鼻が隠れ
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