○月×日 日直 ユメ夫/ヨルノテガム
 


 歯ブラシと歯が入れ替わって 口の中は
 細いブラシだらけで泡立っている
 どのドアを開けてもトイレばかりのびっくりハウスに迷い
 矢印の一方通行を案内に 細くなっていく廊下を進めば
 右を曲がった所で 矢印は上を指し、見上げると
 「もう一度、正月へ戻る」
 の文字に気づき すでに足元から穴底へ落とされている
 蝉の声はラジオのチャンネル合わせの音がして
 世界の言語を運んでは途切れさせている
 暗闇は足首から沼へ入り込んでいくような感覚を帯びる
 
 今、満潮を体感して 身体で時間を刻み計る そして
 水位は確実に肩を越えようとし始め
 上を向いた口鼻が隠れ
[次のページ]
戻る   Point(2)