汚れた川面を見つめている右目だけのアリサ/ホロウ・シカエルボク
 
動きやすいからかな、そう思わないか?」
どうかしら、とアリサは笑った
「街を歩いているとね、こっち見るなって言われることあるのよ、わたしはその人のことを見てもいないのに…きっと左目のせいね、こっちにはなにかを見るという意識はないから、どうしているのか自分でもよくわからないのよ」そして少し考え込む
「選ぼうとすれば、求めようとすれば、手に入らないものはそれだけ増えるのよね」
そう言うとアリサは頭を軽く振って風に遊ばれた髪を落ち着かせる、彼女の髪はとても聞き分けがいい
「帰りましょう」
堤防沿いを歩きながら俺は考えた
アリサ、おまえはその右目でどんなものを見ようとしているん
[次のページ]
戻る   Point(2)