時を見つめていたピアノ/こめ
 
誰も居ない街の

小さな家の壊れて音がでなくなった

ピアノの前に腰掛け

ふうっと大きな息を吐いて

埃まみれな黒のボディを見えるようにしてやった

そして音の出ない鍵盤を必死に叩いた

勿論音なんてでるわけがなかったけど

それでも構わなかった

この街に一人取り残された

時を見つめていたピアノは

誰かに存在を知ってほしかったから

だから僕はここにいると

ひねりあげるように叫ぶ

音はでない

だけど聞こえる

ちゃんと聞こえる

世界にこだますように

この悲しいけれどどこか

耳に残る音楽が

今この街から
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