遠雷/ホロウ・シカエルボク
トやなんかを目当てにやってくるおなじみさんたちに
愛想を振りまきながら応対をしていたとき
店の入り口をくぐったひとりの初老の紳士が僕の名を呼んだ
僕は彼の方を見たが
それが誰かはすぐに判らなかった
だけど確かにその顔には見覚えがあって
思い出そうとしたとき
彼は拳銃を取り出して
僕の胸辺りを撃った
その時は上手く理解出来なかったのだけど
僕は身体の力を失い
ばたりと床に倒れた
それから
焼きごてを押しつけられたみたいな痛みが
左の胸のあたりで爆発した
誰かが店の奥から走り出してきた
「パパ!」とその声は言った
銃声がもうひとつして
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