遠雷/ホロウ・シカエルボク
似ても似つかない名前だった、本人もそのことは判ってた
「そんなのあたしのせいじゃないもんね」と
よく開き直って話してたもんだった
ふたりが休みの日なんかに果物なんか持ってきてくれたり(時には酒だったりして)
近くの安い店なんかを教えてくれた
「あんたたち一緒になっちまえばいいじゃない」
と彼女はよく僕たちに言った、にこにこ笑いながら
「あんたたちは多分大丈夫だよ」
必ず最後にはそう言ってくれた
無責任な言い草だけどね、と
わざと意地悪な顔をしながら
三年目に僕の勤めているレストランの
年老いた店長が心臓麻痺で死んだとき
彼の次に古いのは僕
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