あのとき、こころはきずだらけだったのだと。/ホロウ・シカエルボク
 
わたしなら泣けない。そんな景色を目にしては決して泣けない。そんな景色の成り立ちはわたしにとってあまりに多くのことを語り過ぎるのだ。わたしはきっとそのすべてを受けとめようとしてひどい混沌の中に落ち、呆然と口を開けて立ちつくしてしまうだろう。そう、ちょうど今この瞬間のように。あれはテレビだ、とわたしは思った。あの女の子はきっと、自分がそう思うとかそんな事とはまるで関係がないところで、綺麗だと言って泣かなければならなかったのだ。感動なんてそんなものだ。綺麗な嘘をつこうとすればわたしたちは涙でも流してみるしかない。わたしは泣けなかった。どうしてだろう?泣いたってかまわなかった。そうすればあの人をもっと困ら
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