あのとき、こころはきずだらけだったのだと。/ホロウ・シカエルボク
の人はきちんと火を消したことがなかった)ゴミ箱に落とし、カップのエスプレッソをシンクに流し、カップを洗い、すすぎ、洗い物受けに伏せる、それだけのことだ。いつも、いつでもやってきたこと。だけどそれがどうしても出来なかった。すべて判っていることなのに、まるでどこか辺境の地でだけ行われている、何の為かも判らない儀式を目にしているみたいにわたしはぼんやりとしていた。そう、言葉すら通じないような、そんな場所。わたしはつい最近テレビで見た、大地に空いた大穴のことを思い出した。その大穴の中には海があり、水はとても青い。まだ若い女性タレントがそれを見て綺麗だと言って泣いていた。わたしはそれを凄く変だと思った。わた
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