セプティエンブレ/吉田ぐんじょう
ひきとめても終わりであることに変わりはなかったのに
あの人あれからさんしょううおのくんせいを探すために旅へでて
今もどこかの星空の下を
いっしんに歩いているのかもしれないのに
さんしょううお
と言いかけてやめて
所在ないので煙草を吸った
このまま死んでゆくのかなあ
と呟きたかったんだけど
このまま まで口に出してやっぱりやめた
背後では深く夫がねむっている
本当によく眠る人だ
だらんと伸ばされた
右手なかゆびの爪を少し齧ると安心した
この人はきっとどこへも行かない
・
郵便受けに宛名のない手紙が舞い込んできた
便箋四枚にわたって
アケビアケビアケビ
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