セプティエンブレ/吉田ぐんじょう
 

ひきとめても終わりであることに変わりはなかったのに
あの人あれからさんしょううおのくんせいを探すために旅へでて
今もどこかの星空の下を
いっしんに歩いているのかもしれないのに

さんしょううお
と言いかけてやめて
所在ないので煙草を吸った
このまま死んでゆくのかなあ
と呟きたかったんだけど
このまま まで口に出してやっぱりやめた
背後では深く夫がねむっている
本当によく眠る人だ
だらんと伸ばされた
右手なかゆびの爪を少し齧ると安心した
この人はきっとどこへも行かない



郵便受けに宛名のない手紙が舞い込んできた
便箋四枚にわたって
アケビアケビアケビ
[次のページ]
戻る   Point(14)