セプティエンブレ/吉田ぐんじょう
ケビアケビアケビ
とだけびっしり書き連ねてあったので
そのまま捨てた
こんなことがたまにある
もう秋だなあと思う
そのあとわたしも誰かに手紙を書こうと思って
便箋を取り出したのだけど
どうしても
手紙を書くべき人のことを思い出せなかった
仕方ないから便箋の端に
ボールペンで落書きをするが
わたしの落書きは何を描いても
子宮みたいになってしまう
そのうち疲れてしまったので
いくつかの子宮の上に頬をつけて眠った
さびしいなあ
みんなどこへ行ってしまったのだろう
帰りたいなあ
だけどどこへ帰ればいいんだろうなあ
夕暮れのひかりがまっすぐに差し込んで
気づいた時には部屋じゅうが
たゆたゆと温かいべにいろの海だ
さびしいなあともういちど
ありったけの強さで思って
思い切ってわたし
深いところまで沈んだ
septiembre...9月。
戻る 編 削 Point(14)