いきかえり/小川 葉
 
にも熱い汁が入っていきました
肌の隙間から汁がもれやしないかと
気が気ではありませんでしたが
そのようなこともなく安心しました
そうしてやっと笑うことができました
無理にではなく
自然な笑みがふと
こぼれていたのです

人はこんな季節になっても
まだ生きていたい
もっと生きたいのだから
このような催しが行われるのだと思いました
あたたまった体はまたすぐに
秋の風に乾かされていって
ついさきほどまでのあの賑やかな会場のできごとも
なつかしいものに変わっていくのを感じていました
二度と取り返しのつかないことばかり
生きてるとしてるような気がして
やはりこの体は秋の
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