オートメイション/吉田ぐんじょう
 
交う音がする

珍しい
祭でもあるのだろうか

うきうきしながら玄関を出ると
しかしそこには誰もいなかった

そのかわり無数のラジカセが置いてあり
そこから音がしているのだった
何故か無性に腹が立ち
ラジカセを消して回ったのだが
最後のひとつのラジカセから
夫の声が流れていて
それだけはどうしても消せなかった
真昼の路上に
愛している愛していると言う夫の声が響く

みんなどこへ行ってしまったのだろう
わたしだけ置き去りにして

それとも最初からここには
誰も居なかったのだろうか

愛している愛している愛している
さびしくなって立ち尽くす
愛してい
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