オートメイション/吉田ぐんじょう
交う音がする
珍しい
祭でもあるのだろうか
うきうきしながら玄関を出ると
しかしそこには誰もいなかった
そのかわり無数のラジカセが置いてあり
そこから音がしているのだった
何故か無性に腹が立ち
ラジカセを消して回ったのだが
最後のひとつのラジカセから
夫の声が流れていて
それだけはどうしても消せなかった
真昼の路上に
愛している愛していると言う夫の声が響く
みんなどこへ行ってしまったのだろう
わたしだけ置き去りにして
それとも最初からここには
誰も居なかったのだろうか
愛している愛している愛している
さびしくなって立ち尽くす
愛してい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)