アルバイターと海/吉田ぐんじょう
した白い砂で
ことによると
いつかの雨の日に
海のことを考えながら
仕事をしていたためかもしれません
・
夏と秋とがちょうど空で交差するこんな季節は
空気が妙に青味がかって見える日があります
レジに背を向けてその色を眺めていると
お客さんが来たので
いらっしゃいませ
と振り返りました
お客さんは大きな海老でした
白目のない眼でじっとこちらを見ています
季節の変わり目には
きっとあらゆる境目がなくなってしまうのでしょう
海老のお客さんはどこから持ってきたのか
月刊海老
というみたこともない雑誌を買って
袋いらないです
といい声で言ってから出てゆ
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