アザレアと僕/蓮沼 栞
 







昔から、白い湖にはアンボビウムが咲いていた。

空を見ると黒い雨が降り、遠くをのぞむと、赤い丘に白い雨が降っていた。そっちには行きたくなかった。
赤と白が交ざり、巨大なイチゴ味の氷にコンデンスミルクをトッピングしたみたいに気味が悪かった。

僕の家は、僕の好きな白い木の屋根をしていた。

空を見てしまうと大好きな白い屋根が真っ黒になるから、あまり見たくないのに、蒼い空に戻ってるかもしれないって癖の様に見てしまう。

毎日の様に大好きな白が、黒い液体に浸蝕されるのを見て、いつのまにか僕はおかしくなってしまった。

外に出ると吐き気がした。
[次のページ]
戻る   Point(2)