アザレアと僕/蓮沼 栞
た。
意味のわからない頭痛がして、息が上手くできなくなった。
心臓の速度は増すのばかりなのに、心は死へと向かっていた。
ある日、庭にアザレアが一輪咲いた。
どこから来たのか、どこへ向かうのか。しかしアザレアは確かにそこに咲いていた。
毎日、朝に目が覚めると小さな窓からアザレアを見た。少し高い所にある窓は、アザレアを見るにはあまりにも不憫で、僕はいつも顔をガラスにへばり付けながら、有り得ない角度に頭を傾けて見るしかなかった。
窓の下に椅子を置いた。
部屋の中にある唯一の椅子を、アザレアを見る為に捧げた。
椅子の上に立つと、アザレアがよく見えた。
よく見ると、花びらの先はビンク色に染まっていて、僕の視線を感じ、恥ずかしがって、顔を赤らめている様に見えた。
アザレアが咲いて14回、月が地球の裏側へ旅をしに行って、どこかに遊びに行っていた太陽が帰ってきた時、
僕は扉を開けて青空を眺めていた。
やっと来てくれた。
アザレアが言って、
ありがとうと僕は言った。
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