或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
 
られたように乱れはしましたけれど
あの人はその間も変わらず縁側に座っていたし
長男と次男は飽きもせずに鬼ごっこをして遊んでいましたから
私はそれだけで安心だったのです



やがてあの人が死んでからすぐに長男は家を出て
それきりふっつりと音信が途絶えてしまいました
次男は家から通えるところへ就職をし
やがて就職先でおよめさんを見つけてきました
およめさんは快活でよく働く人でした
ああこれで安心して死ねると思って
わたしは生前あの人が
農薬なんかをしまっておいた棚を開きました
でもあれほどたくさんあった農薬の瓶は
ひとつもなくなっていたのです
あの人が持って行った
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