或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
 
だったからです
都会から来た人はどんな人でも
影法師のように見えました
風に揺らぎながらただへなへなと歩いて
時折路傍で煙草をふかしたりしていました



私が結婚をしたのは十七の夏です
結婚相手の男はむかし通っていた学校の
大人の男の先生に似ていました
膝の抜けたみすぼらしい作業ずぼんを履いて
顔を泥だらけにしながらその人は
ある日私の前にやってきました
そのことはそれだけで十分でした
これ以上ないくらいによくわかりました
私たちは夫婦となり
ショウちゃんや母をそこへ置いて
実家よりももっと田舎にある
小さな木造の家へ移り住みました
男の人のことをわたし
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