或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
す
・
戦争というものが終わったとき
私は十三歳で
おぼろげに人生というものについて
考えはじめていました
何でもできそうな気がしました
だってあのひどい戦争を
戦争が始まる前と同じ体で同じ顔で
どこもそこなわずに生き延びられたのですからね
私たちは父の畑を耕し
ぼそぼそと何かそこらへんにあるものを植えて育てました
都会から食料を求める人が私たちのところへも来ました
そんなとき私たちは決まって
父の遺骸の埋まったあたりに実っている薩摩芋をやりました
耕さなくてもそこには勝手に薩摩芋が出来ていましたし
しかもそれは
臓器のようにグロテスクで鮮やかな色だっ
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