或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
うしたことか
ある青天の日
畑でもぐらとりをしていた父が
誰かが気晴らしで落としたのであろう
爆弾にあたって死にました
畑の真ん中で焼け焦げた父は
まるで
父自体が大きなもぐらのようにも見えました
私たちは父を真ん中にして輪になって立ち
黙って父の死を悼みました
都会から疎開へやってきた知らない人が
私たちのその有様を見て
まるで昔からの知り合いのように
素早く丁寧に父の遺骸を埋めてくれました
空が青かったことを覚えています
・
戦争中は食料が乏しかったため
薩摩芋ばかり食べました
そのおかげで私は
もうきっと死ぬまで薩摩芋を食べないだろうと思います
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