或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
るのです
恐ろしい予感がしました
・
戦争のことはきれぎれにしか覚えていません
こんな田舎の空にも毒虫のような影を落としてB二十九が飛び
私が母から種を貰って鉢に育てていた花は
それが
産卵するかのようにたわいなく落とした爆弾で
目の前で火をあげて砕け散りました
この世に人間が太刀打ちできないものがあるなんて
大切なものがこんなに簡単に破壊されてしまう
そんな理不尽なことがあるなんて知りもしませんでした
さいわいにも私の家はみすぼらしく
しかも目印も何もない
広大な土地のはずれに建っていたために
家が花のように燃え上がることはありませんでした
ただどうし
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