或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
 
らない子だったのです

このあたりの冬は静かです
あんまり静かで気が滅入るほどです
ショウちゃんは夜泣きをするたちでしたので
新月の夜なんかにおぶい紐でおぶって
どこにも灯りの見えないあてのない道を
ゆっくりゆっくり歩きました
ただ身を切る寒さだけがそこにありました
あの頃の空気は確かに透明な玻璃(ハリ)で出来ていたに違いないと
今となってはそう思います



学校へは時々行きました
野良仕事の忙しくないときだけでしたけど

大人の男や女の先生が
絶えず何か注意しながら歩き回る狭い校庭や
子供たちの風にはためく
絣や紬の着物の袖などを見るのは楽しいも
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