或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
 

ぼんやりしていると
少し年老いて でも昔と変わらず快活なおよめさんが
ほらおかあさん ごはんがこぼれますよ
と笑いながらつっつきます

この頃は
孫娘のまねをしてお砂糖も牛乳も入れないコーヒーを
ほんのひとくちだけ飲んでみたりするのですよ

テレビの前に据え置かれた座イスで
うつらうつらしていると
孫が毛布をかけてくれます

幸せ だと 思います
だけどもう
眼もかすんで
立つこともできないですし
耳もよく聞こえないのです

毛布をかけてもらっていい気持ちです

昔はもぐらのようになった父の夢や
小さいままのショウちゃんや母の夢をよく見ましたけれど

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