或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
このごろはちっとも夢を見ません
夜の海にたったひとりで
ふんわりと浮かんで流されてゆくような眠りです
もしかしたら
私はずっと夢を見ていたのじゃないでしょうか
あの頃の十二歳のまま
こんなにも長い夢を
こんな風になるまで ずっと
もう起きて家に帰らなくてはなりません
そこに立っているのは誰でしょう
どこから来たのですか
わたしを置いてゆくのですか
何故かしら
眼を開いても眼を閉じても
ずっと夕闇の明るさです
二〇〇九年八月の風が吹く日
祖母の語った話を孫娘記す
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