或る少女の生涯について/吉田ぐんじょう
平均的な父親だったような
毎日広い畑で野良仕事をして
休憩中は煙管をふかし
夜になれば質の悪い酒で酔っ払って
たまに母や子供を殴るような
たったそれだけの
それ以上でもそれ以下でもない父親だったと記憶しています
・
弟が一人います
少し年が離れているため
私は物心ついてからすぐ弟のおもりをしながら
野良仕事をする母をたすけて家事をするようになりました
弟はショウちゃんと云います
おさるのおにんぎょさんみたいに可愛い子で
私は姉というよりは母親のように彼をかわいがったものです
実際
私のようなものは
物心ついてすぐに母親の役目を果たせなければ
まるで要らな
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