長い休み/殿岡秀秋
胸に
鈍い痛み
金属の塊が
内臓に当たるみたいだ
長い廊下を行く上履きの音は
心臓の音と重なる
壁の染みが目になっていて
珍しくやってきたぼくを見つめる
壁の目と目がささやきあう
「ずいぶん休んでいたじゃない」
「もう来ないのかとおもったわ」
教室の扉の前に立つ
会合を開く異星人たちの喚声が聞こえる
ここまで来て帰るわけにはいかない
ついに扉をあける
ひと月前と同じ教室の風景がある
クラスの子たちは
昨日もぼくがいたかのように
話しかけてきた
一時間目が終わって休み時間には
毎日通っていたころの生徒に戻っていた
数十年が過ぎて
父の
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