長い休み/殿岡秀秋
たたび小さな国の侍にもどってから
出世して
一国の殿様になるまで
丹念に空想の劇を頭の中に描く
夜がくる
夕食のあとで
「どうなの」と母が聞く
「よくなったような気もするけど
なんだかだるい」
「ではもう一日やすみなさい」
と母がいう
ぼくはまた休めることになった
そうして十日も休んでいたら
担任の教師が家庭訪問にきた
母はぼくに来ないようにといって
和室の襖を閉めて
ひとりで応対した
それからも休みつづけた
夕食のあとで母は確認をするが
学校に行きなさい
という言葉は出てこない
「明日は学校へ行きなさい」
といつか指示されるだろうと思っ
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