一人語り/山中 烏流
 
携帯と、トイレットペーパーと、それからカッター

病気を語ることで
病気から逃げていたのかもしれないね
むしろ、私には
あの頃の私が病気であったかさえ
よく分からないよ

後ろの席のあの子の方が
私なんかよりよっぽど
病気、だったんじゃないかな




警察の取調べ室とか
役所の相談室だとかっていうのは
清潔にし過ぎていて
妙な圧迫感があるんだよ

できることなら
一生
ああいった場所には行かない方が
ある種、幸せでいれると
そう思うんだ

本当にさ




今の私が絶望していることは
誰も知らなくていいんだ

誰のせいでもないこ
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