鋸でぎこぎこ切っているのだ/人 さわこ
っていてよね。手を振っていてよね、見えなくならないでね。私の中で行き続けていてよね。流離のベイビーフェイスにぞっこん。私はもうただの肉の塊でしかなく、聞こえるのはわが子の泣き声。何を泣いてるの、私は怒ってなどいないのに、心配でずっと見下ろしていた。子は私に別れを告げ、時間が秒針と同じ速度で経過する。大人になった我が子を見て、私は始めて息を吐く。この世界に温度はない。でも、吐く息は澄んだように白く、美しい。半音上がる。曲がりくねった魚をさばいたら、お菓子を組み立てたら家になった。公な場所で性交接をしてはいけない。年が明けて、かるたをしている所に引越しの業者が来て、我々も参加させてくださいとせがまれる
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