鋸でぎこぎこ切っているのだ/人 さわこ
 
tasu助けてくださいと言った。声を振り絞ると聞こえるのは絶え間なく揺らぐ記憶の中で何かを誘導しようとしている集団、その中心人物に手錠をし私たちはつかの間の眠りにつく。感情が感情を呼び起こし、極々瞬間的なレンタルサービスを成立させる。忘れたはずの甘い運命にまだ歩くことも覚束なかった私は目を閉じ、真剣にその声から意味を掬う。独りきり、ただの独りである事実を決して頭の隅に追いやっていたわけではない。前へと進む努力を馬鹿にしたわけでもない。あなたが髪飾りを耳元で輝かすその一瞬に見惚れてしまっただけだ。百あるというその仮面を一枚一枚私に被せてください、今までの愚かな言葉を許してほしい。閉じたはずの蓋を私は
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