紅茶が冷めるまで/木屋 亞万
塀と壁の隙間には乗らなくなったお父さんの古い自転車がありました。その奥でもぞもぞと何かが動いているのが見えました。ひつじかなと思って、自転車と壁の隙間を身体を平たくして進んでいくと確かにそこには何かがいました。暗くてよく見えなかったけれど、そのひつじのようなものはどんどんと奥へ進んでいきます。わたしはそれを慌てて追いかけました。
ふと気付くと私は草原に立っていました。空には四匹のひつじが浮いています。川底から水面を流されていくひつじを眺めている気分でした。草原には蚊がたくさんいて、むき出しの足や手を狙ってふらふらと何匹も飛んでくるのでした。左の二の腕に止まった蚊を右手でぴしゃんと叩くと、蚊はつぶ
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