紅茶が冷めるまで/木屋 亞万
もうお姉さんになったので私は大人たちが飲む紅茶をもらえるようになりました。今までは色でごまかした甘い水を飲んでいましたが、今日はお母さんたちがいつも飲んでいるような高級なティーカップが私の前に置かれています。透き通ったこげ茶色の宝石が白いカップに注がれていきます。白い湯気が柔らかな点線になって茶色い水面をくるくる舞います。カップに顔を近づけるといつも遠かった紅茶の匂いが目と鼻の先から顔の中に入り込んできます。紅茶の匂いはとても温かくて大きな時計台のあるレンガの街のにおいがしました。紅葉と銀杏が結婚したら子どもはきっと紅茶のにおいがするのでしょう。
口をそっとカップに近づけたけれど湯気が意地悪して
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