真新しい夏/シンメトリー/aidanico
いた。あらん限りの力を込めて嗚咽したのだ。太陽と地平は滲んで交ざり合った。目を開けると知らない部屋の便所の床に寝転がっていた。とても静かだった。太陽はすっかり昇っていて、便所の隙間に光が差し込んでいた。これを辿ってゆくと、ドア以外の何かが見えるような気がして、期待を秘めながらノブを廻す。
きぼうのいろはなにいろ?ときかれて、ぜつぼうのいろはなにいろだとおもう?と尋ねられた心地がした。どちらも言葉の響き自体に重みはなく、とても軽いもので、やわく、簡単に押しつぶされてしまいそうな言葉だった。返事を求めている風でもなく、わたしは大きな肘掛を提供された心持になった。このまま浅い眠りに付いてもいい
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