真新しい夏/シンメトリー/aidanico
 
がどんどん大きくなってひび割れたレコードになる。同時進行で優雅なワルツが流れている。ピアノトリオで相当の演者の様子だ。何にも知らない世界に行くのならばいっそと思いそばにあった錠剤と葉巻をかき込みグラスを奪い取って一気に飲み干した。正確に言うと飲む途中でグラスは右手から投げ出されていた。しかしながら、如何も迷い込んでしまったらしい。ここはトリップした原色世界でもなく、悪夢の中でもなく、朝焼けの瞬間だった。わたしは大よその悪事の限りを尽くしたつもりであったのに、それでも太陽は地平からしろい夜を染めてゆくのだ。何故こんな情景に出くわしたのだろう。写真でも話でも聞いた事のない風景に、私は泣いてしまっていた
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